花は桜君は美し
春の風が通り過ぎるたび、桜の花びらが舞い落ちる。あの頃、君と並んで歩いた小道は、今もまだ同じように桜で満たされている。風に揺れる花びらが、ひとひらずつ君の笑顔を思い出させる。「卒業したら、一緒に桜を見に来よう」って、君が手を振って言った日のこと。制服の袖口に桜の花びらがついていて、君はそれを指で摘んで、僕の手の平に置いた。「きれいだね」と君が笑うと、その声が風に乗って、桜の香りと一緒に胸に染み込んだ。あの時の桜は、きっと君の笑顔に比べれば、少しも引けを取らなかった。
時は流れて、季節は巡って。桜が咲くたびに、君のことを思い出す。教室の窓から見える桜の木、放課後一緒に食べた桜餅、帰り道で拾った花びらを入れたノート……あれらの思い出は、桜の色褪せることなく、心の中に鮮やかに残っている。君がくれた言葉、「桜は散っても来年咲くけど、出会いは一度きりだよ」って、今でも耳に残っている。
今年も桜が咲いた。同じ小道を独りで歩いてみると、君がいたはずの右側が空いている。でも風が吹いて花びらが舞うと、まるで君が隣にいるような気がする。桜は一季節だけで散ってしまうけれど、君の美しさは、いつまでも枯れない。それは桜のように儚くはなく、心の中でずっと咲き続けているから。
風がまた吹いて、花びらが肩に落ちる。僕はそっと手で受け取り、笑った。「花は桜、君は美し」——君がいたから、あの春は特別だった。そして今でも、この言葉は変わらない。
