大学院での学習の中心は原典研究である。研究者はサンスクリット語・パーリ語・中国語・チベット語などの原語によるテキストを精読し、文献批判やテクスト校訂を行う。例えば『大乗起信論』の成立背景や『金剛経』の異本比較など、テキストの成立過程と思想的意義を明する作業が求められる。これにより、仏教思想の根源的な理が深められる。
また、思想史研究は仏教学の核心分野の一つである。空性思想・仏性論・中観学派・瑜伽行派などの概念の展開や、各時代の仏教思想家竜樹・提婆・玄奘などの思想形成過程を分析する。この際、歴史的文脈を踏まえて思想の変容を追跡し、その社会的・文化的背景との関連性を明らかにすることが重要となる。
さらに、近年では社会との関わりに焦点を当てた研究が目されている。仏教が政治や経済・芸術に与えた影響、あるいは現代社会における仏教の表象例えばマインドフルネスや環境思想との関連など、従来の文献中心の研究を超えた応用的課題が探究されている。これにより、仏教学は伝統的学問から現代的課題に対応する学問領域へと発展している。
大学院での研究において、学術的方法の習得は不可欠である。文献調査の手法、データ分析のスキル、国際学会での発表経験など、研究者としての基礎能力を培う。特に、国際的視野が求められ、海外の研究動向や国際共同研究への参画が奨励されている。
仏教学の大学院研究は、知的好奇心を満たすだけでなく、人間存在の本質や文明の多様性を探究する途を提供する。その学術的成果は、仏教文化の理を深めるだけでなく、現代社会の諸問題に新たな視点をもたらす可能性を秘めている。
